こんにちは、とし(toshi_kaigo_go)です(^^)
今回は櫛木理宇さんの小説『殺人依存症』のレビューをしたいと思います\(^o^)/
『殺人依存症』は、以下のような読者におすすめできる作品です。
✅ 衝撃的なミステリー小説が好きな人
✅ 犯罪者の心理や社会の闇を深く掘り下げる作品を求めている人
✅ 一筋縄ではいかない「悪女」キャラに興味がある人
✅ 続編やシリーズものをじっくり楽しみたい人
この小説は、性犯罪や虐待、連鎖する暴力をテーマにした衝撃的なミステリー作品です。
刑事・浦杉を主人公に、女子高生誘拐事件を追ううちに明らかになる異常な犯罪者たちの実態、そして彼らを裏で操る黒幕の存在が描かれています。
物語の進行とともに、犯罪の背景にある「虐待の連鎖」や「社会の無関心」というテーマが浮かび上がり、読者に強烈な印象を残します。
この作品は、単なるサスペンス小説にとどまらず、加害者と被害者の心理、社会の構造的な問題、そして正義とは何かを問いかける内容となっています。
特に、読者にとって耐えがたいほど生々しく描かれる虐待のシーンや、加害者たちの異常な思考が、リアルな恐怖を感じさせます。
本記事では、『殺人依存症』のあらすじを振り返りながら、作品の持つテーマや衝撃的な展開について深掘りしていきます。ネタバレを含むため、未読の方はご注意ください。
先に読みたいという方はこちらからどうぞ\(^o^)/
電子書籍版はこちらからどうぞ\(^o^)/
あらすじ(ネタバレあり)
物語は、ある女子高生が電車内で痴漢され、そのまま連れ去られるという衝撃的な事件から始まる。
被害者の少女はその後、暴力と性的暴行を受け、遺体となって発見される。
捜査を担当するのは刑事・浦杉。彼は事件を追う中で、加害者たちが裏サイトを利用し、計画的に特定の電車に乗って痴漢を繰り返していたことを突き止める。
犯人たちは単独ではなく、ネットでつながった犯罪者グループだったのだ。
さらに捜査が進む中、小学生の男児が誘拐されるという別の事件も発生する。
この事件を担当する浦杉には、かつて自分の息子が誘拐され、未だに遺体すら見つかっていないという過去があった。
この事件をきっかけに家族と距離を置き、警察署の近くのアパートで一人暮らしをしている。
そんな浦杉の隣人であるシングルマザーが入院することになり、浦杉は一時的に彼女の娘を預かることになる。
少女の家族は過去に虐待を受けており、浦杉は彼女を守ろうとするが、娘を顧みなかった自分が他人の子供と過ごすことに罪悪感を覚える。
事件の捜査が進むにつれ、痴漢グループのメンバーたちは単なる性犯罪者ではなく、異常な性癖を持ち、犯罪に対する倫理観が完全に欠落していることが明らかになる。
彼らは「快楽のためなら何をしても構わない」という歪んだ価値観を持ち、罪の意識をまったく感じていなかった。
浦杉は彼らを追い詰め、事件は解決したかに見えた。
しかし、浦杉は捜査の中で、真の黒幕が別に存在することに気づく。
犯人たちの背後には、彼らを巧妙に操る一人の中年女性がいたのだ。
その女性の過去が徐々に明らかになる。彼女は幼い頃から家族に暴力や性的虐待を受けており、その経験が彼女の人格を歪めた。
虐待は虐待を生む——この言葉が物語を象徴するテーマとして深く刻まれる。
さらに、この女性は学生時代からすでに異常な行動を見せていた。
クラスメイトをそそのかして給食に異物を混入させ、集団食中毒を引き起こしたり、放火事件を起こしたりと、犯罪を繰り返していた。
そして、家出後には仲間を引き連れて実家に戻り、かつて自分を虐待していた家族に復讐を遂げる。
浦杉はこの女性と過去に遭遇していた。
かつての事件現場で彼女を目撃しており、お互いの顔を知っていたのだ。
彼は彼女を追うが、その最中、衝撃的な知らせを受ける。別居中の妻から「娘が誘拐された」と連絡が入ったのだ。
同時に、アパートで預かっていた少女も姿を消していた。
犯人からの連絡を待つしかない状況の中、浦杉はある選択を迫られる。
女性は取引を持ちかけ、「警察を辞めるなら、息子を殺した犯人の情報をやる」「もしくは、お前の娘か預かっていた少女のどちらかを助ける」と言い放つ。
だが、すでに片方は殺されており、どちらが生きているかは分からないという。
浦杉は犯人ではなく、誘拐された子供を助けることを選ぶ。
しかし、そこに現れたのは彼の弟のNPO法人に関わる男で、かつて浦杉が逮捕した人物だった。
彼は浦杉を拘束しようとし、抵抗する浦杉は脇腹を刺されてしまう。
絶体絶命の状況——だが、その瞬間、警察が突入し、男と女を拘束する。
部屋の中にはキャリーケースがあった。
その中には、無残にも虐待を受けた末に殺害された少女の遺体が収められていた。
浦杉は病院に運ばれ、意識を取り戻したとき、そこには娘の姿があった。
娘は少女と同じ部屋に監禁されていたが、間一髪のところで助かったのだ。
しかし浦杉の心には、「本当に助けたかったのは少女だった」という深い罪悪感が残る。
彼は、警察を辞める決意をする。今後は家族と向き合い、過去と向き合って生きていくことを決めた。
だが、物語はこれで終わらない。
逮捕されたはずの女性は、護送中のパトカーが何者かに衝突されることで脱走に成功する。
彼女はこれまでの犯行を振り返り、「もう女子供を殺すことには興味がない」と悟る。
しかし、彼女の胸には今も過去の虐待への復讐心が燃え続けていた。
「とっくに人じゃあ、なくなったからね」
その言葉を最後に、彼女は新たな目的を胸に抱き、物語は幕を閉じる。
感想と考察
虐待と性犯罪の生々しい描写
『殺人依存症』は、性犯罪や虐待を容赦なく描いた作品であり、その生々しさが読者に強烈なインパクトを与えます。
特に、被害者が受ける暴力や心理的ダメージの描写は、読んでいて息苦しくなるほどリアルです。
「性犯罪は心を殺す」
この言葉が作中で語られていますが、本作を読んでいると、まさにその通りだと実感します。
肉体的な被害だけでなく、被害者の心が徹底的に壊され、人生そのものが奪われてしまうという事実が、物語を通じて突きつけられます。
性犯罪加害者たちの異常な思考もまた恐ろしく、彼らは自らの欲望を満たすためなら何をしてもいいという価値観を持ち、罪悪感すら感じていません。
読んでいて嫌悪感を覚えるほどのリアリティが、本作の持つ衝撃の一つだといえるでしょう。
加害者の責任転嫁と思考の歪み
本作に登場する加害者たちは、共通して「自分は悪くない」という意識を持っています。
- 「自分がこうなったのは社会や環境のせいだ」
- 「周りが自分にそうさせるから悪い」
このような責任転嫁の思考は、現実でも犯罪者に見られる傾向です。
特に、犯行を主導していた女性は、幼少期に虐待を受けたことで人間としての感情が欠落し、他人の命を奪うことにためらいがなくなっています。
彼女にとって殺人は、「弱い自分を消し去る儀式」のようなものであり、被害者の少年少女たちは彼女の過去の投影だったのです。
虐待の連鎖が新たな加害者を生むというテーマが、この物語の根底にはあります。
被害者が加害者になり、新たな被害者を生み出す。この負のスパイラルを止めることができるのか?
という問いが、読者に投げかけられます。
浦杉の正義感と現実のギャップ
浦杉は刑事としての正義感を持ち、「不幸な過去を言い訳に犯罪を正当化する風潮には反対する」と強く主張します。
「おれは怒りと不満を、関係のない弱者に向けるものを肯定しない。絶対にできない。」
この言葉はまさに彼の信念を表しています。
彼は、どんなに辛い過去を持っていても、それを理由に犯罪を犯すことは許されないという立場を貫きます。
しかし、読者の視点から見ると、「実際に虐待を経験していない人間だからこそ言えるのでは?」という疑問も浮かびます。
実際に虐待を受け、人生を破壊された人にとって、浦杉の言葉はあまりに綺麗ごとに聞こえるかもしれません。
犯罪の連鎖と社会の無関心
作中では、「虐待は虐待を生む」という言葉が印象的に使われます。しかし、虐待の連鎖を生むのは直接的な暴力だけではなく、「周囲の無関心」も大きな要因だと作中で指摘されています。
浦杉が預かっていた少女も、過去に家庭内で暴力を受けていました。
助けを求める子供たちがいても、周囲の大人たちは見て見ぬふりをすることが多い。
社会がそうした問題を放置し続けることで、虐待の被害者が新たな加害者となり、さらに次の被害者を生み出すという構造ができあがってしまうのです。
作中の女性は、まさに「社会の無関心」が生み出した怪物でした。
彼女が受けた虐待を誰も止めず、誰も救わなかった結果、彼女は他人の人生を破壊する存在になってしまったのです。
ラストシーンの恐怖と今後の展開への期待
逮捕されたはずの女性は、護送中に脱走し、再び闇へと消えていきます。
彼女はもはや「女子供を殺すことには興味がない」と語りますが、過去の虐待を行った人間への復讐心は消えていません。
最後に彼女が放った言葉——
「とっくに人じゃあ、なくなったからね」
これは、彼女が完全に人間性を捨て去り、純粋な憎しみだけを動機として生きていることを示しています。
今後、彼女がどのような行動を起こすのか、そして『殺人依存症』の続編である『監禁依存症』ではどのように描かれるのかが非常に気になります。
おすすめ関連作品
『殺人依存症』を読んで衝撃を受けた人には、同じように「悪女」や「犯罪心理」、「虐待の連鎖」をテーマにした作品もおすすめです。ここでは、特に共通点が多い2作品を紹介します。
『絶叫』 葉真中顕(はまなかあき)著
あらすじ
東京都内のアパートで、一人の女性が餓死するという事件が発生する。死後、半年以上も放置され、身元不明だったその女性。しかし、彼女はかつてエリート銀行員だったことが判明する。彼女の過去を追ううちに明らかになるのは、壮絶な人生——虐待、貧困、DV、そして犯罪。なぜ彼女は転落していったのか? 彼女の人生をたどることで、日本社会の闇が浮かび上がる。
おすすめポイント
『絶叫』は、『殺人依存症』と同じく、虐待や社会の無関心によって生まれる「歪んだ人生」を描いている作品です。本作の主人公もまた、幼少期に虐待を受け、それが原因で人生が狂っていきます。社会の冷酷さや、貧困が犯罪につながる構造が生々しく描かれており、「虐待の連鎖」というテーマに強く共感した人におすすめの一冊です。
『嗤う淑女』シリーズ 中山七里
あらすじ
主人公・美智留は、一見すると品があり、知的で魅力的な女性。しかし、彼女の本当の顔は、ターゲットにした人間を巧妙に操り、破滅へと導く「悪女」だった。美智留は自分の過去に強い復讐心を抱き、それを原動力に詐欺や殺人を繰り返していく。彼女はなぜここまで冷酷になったのか? 彼女を生み出したのは社会なのか、それとも彼女自身なのか?
おすすめポイント
『嗤う淑女』の主人公・美智留は、『殺人依存症』に登場する女性と共通点が多いキャラクターです。幼少期に受けた虐待や社会の理不尽さに対する復讐心を抱き、異常な行動を起こす点が酷似しています。しかし、美智留は圧倒的な知性とカリスマ性を持ち、直接手を下さずに他人を破滅させるスタイルを取るのが特徴です。『殺人依存症』の女性に興味を持った人は、美智留の策略にもゾッとすること間違いなし。
嗤う淑女については過去に記事にしたことがあるので良ければそちらもどうぞ\(^o^)/
『殺人依存症』は、単なるミステリー小説ではなく、人間の闇、社会の構造、虐待の連鎖といった深いテーマを扱った作品でした。
今回紹介した3作品も、それぞれ異なる角度から同じテーマに切り込んでいます。
- 『絶叫』 → 虐待・貧困・社会の無関心が生み出す犯罪
- 『嗤う淑女』 → 復讐心を持った悪女が引き起こす破滅の連鎖
どれも、『殺人依存症』が好きな人なら間違いなく楽しめる作品です。ぜひ、次に読む本の参考にしてみてください。
まとめ
櫛木理宇さんの『殺人依存症』は、単なるミステリー小説にとどまらず、性犯罪、虐待、暴力の連鎖といった社会的なテーマに深く切り込んだ衝撃作でした。
物語は、女子高生の誘拐・暴行事件を追う刑事・浦杉の視点から進みますが、単純な事件解決には終わらず、犯罪者の異常な思考、虐待の連鎖、そして社会の無関心といった、より根深い問題へと読者を引き込んでいきます。
特に、「性犯罪は心を殺す」 という言葉や、「虐待は虐待を生む」 というテーマは、物語全体を通して強く印象に残ります。
さらに、逮捕されたはずの黒幕の女性が脱走し、「女子供を殺すことには興味を失ったが、まだ復讐心は残っている」と語るラストシーンは、次なる事件の予感を漂わせ、読者に強烈な余韻を残します。
続編『残酷依存症』への期待
本作には続編である『残酷依存症』が存在します。『殺人依存症』のラストで逃亡した女性が再び登場するのか、浦杉はどのように物語に関わっていくのか、非常に気になるところです。
また、本作では「虐待を受けた子供がどのように生きるのか」「犯罪加害者が更生する可能性はあるのか」といったテーマが描かれましたが、続編ではさらに深く掘り下げられるかもしれません。犯罪を防ぐためには何が必要なのか? という問いに対する答えが示されるのかも、注目したいポイントです。
最後に
『殺人依存症』は、読後に何とも言えない余韻を残す作品でした。犯罪の恐ろしさだけでなく、人間の心の闇や、社会が生み出す加害者と被害者の構図がリアルに描かれています。
読んでいて辛くなるシーンもありますが、それでも目を背けてはいけないテーマが込められている作品だと感じました。
そして、この物語はまだ終わっていません。
続編『残酷依存症』では、どんな展開が待っているのか——。今後のシリーズにも大いに期待したいと思います。
コメント